ホタル
第二章【衝動】



……………


「ごめん、別れよう」

あぁ、またいつもの台詞がくる。

「朱音の側にいるのが辛い。だって朱音、俺の事好きじゃないだろ?」

高校に入って三度目の台詞。いや、四度目か?とにかく毎回、この台詞で振られるのだ。

だからいい加減免疫もできてるし、言われることを覚悟して付き合う事を決めているから傷付くこともなかった。だからあたしは毎回同じ台詞を吐く。

「いいよ」

そう言うと相手は一瞬たじろぎ、「やっぱり、最初から俺のことなんか好きじゃなかったんだな」と辛そうに呟き、悲劇のヒーロー面をする。そっちが振ったのに。

でも大概あたしに理由があるわけだし、悲劇のヒロイン面をする気もさらさらないので、申し訳なさそうな顔をして「ごめんね」と言うのだ。それでおしまい。それがあたしの別れ方。

ただ今回は、最後の「ごめんね」を言う気にはなれなかった。
言わないままに、相手に背を向けた。

あたしの背に相手が何か言っていたが、振り向かずにそのまま公衆トイレへ向かう。




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