君は変人

中2―スー―



「ねえ、玲菜」

急にトイレで手を洗っていたら、声を掛けられた。


あれ、おかしいな。

連れションは嫌いだから、トイレで声をかけられることは滅多とないんだけど。


女子トイレだし、告白もないからなー。



「あ、美雪かあ」

振り返ると、美雪が申し訳なさそうな顔をしながら、あたしを見ていた。


美雪とはよく喋るほど仲がいいわけじゃないけど、というより、多分美雪は川さんの方が仲いいんだろうな。


「あのさー・・・・・・。
川さん、元気ないのって、やっぱり私のせいなのかな?」


そう見えるよね。

やっぱり、周りから見ても、川さんって元気ないように見えるんだ。


でも、ゲンが前、美雪の好きな人は田上だって言ってたような気もする。


「そんなことないよ。
ほら。桜とちょっと喧嘩したから。
だから、美雪のせいじゃないって~」


本当のこと言えば、2割は美雪のせいだと思ったりもしてる。

ただでさえ、桜と田上に板挟みで可哀そうだって言うのに、美雪のことまで考えなきゃいけないんだから。

まあ、川さんは案外優しい人だから。


あ、失敬。案外は訂正。


「本当に?」


「うん。
大丈夫、大丈夫。
川さん、美雪のことすごく大切だと思ってるよ」


こういう嘘って、本当にその人にとって優しいのか分かんない。

あたしだったら、本当のこと言ってほしいだろうなって思う。


だけど、実際知らなくていいことだって、世の中にはたくさんあるんだ。




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