君は変人
過去2

中1十月―百合―

くじ運はどちらかと言えば、良い方だった。

1位や2位が当たるわけでなくても、大抵ポケットティッシュにはならなかった。

しかし、今回は最低最悪に悪かったのだ。


「では、1-1の劇の主人公とヒロインは、桜と浅川さんでいいですね?」

優等生、という言葉がこんなに相応しい人がいるだろうか、と思うくらいの学級委員は言った。


ヒロインだけなら、まだ良かったのだ。

今までにもなかったわけではなかったから、役自体にはそんなに抵抗はない。

しかし、相手が桜のロミオとジュリエットは少しきつい。

ベタ中のベタと言っていいほどのラブストーリーじゃないか。


気になっている男子とラブストーリーの王道を演じるというのは、私が読む携帯小説によくある展開だ。

大抵はそれをきっかけに仲良くなるのだが、まあそれはあまり期待しない。


配られた台本をぱらぱらと見るが、原作とほぼ同じだった。


「百合、いろいろとよろしくな」


私の顔を覗き込んで言った。顔が近い。

うん、という曖昧な返事しかできず、申し訳ないと思っていると桜は言った。


「そう言えば、この学校の文化祭は12月なんだな。
俺の知識によると、10月または11月ぐらいだと思うのだが」

桜に言われて気付いたことだったので、残念ながら私はその答えを知らない。


「それはね、どこの学校もその時期に文化祭を行うでしょ?
だから、劇とかで使うライトなどのセットの貸し出しは集中しちゃう。
貧乏なこの中学は少し時期をずらして、そういうセットを安く借りようと思ったわけ」

右手の人差し指を立てながら、玲菜は単純明快に説明した。

「そんな情報、どこから?」と玲菜の隣から源が言った。

「え?そんなの決まってんじゃん。
今の彼氏からだよ。一つ上で生徒会の人だから、すごく真面目でいい人なの」

ふーん、と源は聞いた本人のくせに素気ない返答だった。

しょうがなく私は相槌を打った。


「今で2週間と5日だっけ?」

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