君は変人
現在4

中2四月―百合―


私は今、とてつもなく、後悔している。

何故、聞いてしまったのだろう、と。

聞かなければ、ずっと変わらない日常が、待っていたかもしれないのに。


「百合。
俺さ・・・・・・」

桜が何かを言おうとしたので、私は急いで遮った。


「ねえ、それを聞いたら何か変わるかな?」

少し目を丸くした桜は、優しく言った。


「人間は一番、変わらないものを求めている。
結局、良くも悪くも、変わってしまうくらいなら、今がいいんだ。
上を目指していない人間は、きっと皆、現状に甘えている」

まるで自分に言い聞かせるようにも、見えた。


「変わっちゃうんだね。
嫌だって言っても、だめなの?」


桜は困った顔をした。

ああ、聞きたくないな。

何となく、自分の中で桜がなんて言うのか、テレパシーのように伝わってきた。


「ごめん。
受け止めるよ、現実を。
そのかわり、一つだけ約束して?
絶対にいきなり消えないって」


じっと見つめる君の瞳を、私は逃さない。


「大丈夫。
百合にはもう、隠し事はしないよ」


こんな時まで無表情な桜を見て、私は不思議と泣きそうになる。


いつかは来ると思っていた。

永遠など、この世に存在しない。


始まりがある限り、終わりはつきものだ。


私は感じた。

終わりが近付いている、音を。

だけど、私は聞こえないフリをした。


やはり、私は現状に甘えているのか。





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