【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「仁菜っ!」



ワンコールもせずに勢いよく出た翔に吃驚してしまう。



『…あ…私っ』


「今どこだよ?」



私の言葉を遮った翔は、どこか早口に感じる。



『…ガミさんの家…』


「5分で行くから待ってろ!」


『あ…うん』



すぐに切られた携帯に少し不安になりながらも、ガミさんの部屋を出た。



「…あら?もう終わったの…?」



ガミさんはきょとんとした顔でソファーに座っていた。


涼も壱成さんも私がリビングを出た時と同じ位置に座ったままで、私を見て優しく微笑む。



『…あっと…今から来るって言うから…ちょっと出てくるね?』


「仁菜はやっぱりお兄様より彼氏かぁ〜」



涼はもういつも通りになってて、はははと笑っていた。



「仁菜」



玄関に向かおうとした私の背中に掛けられた声は壱成さんのもので、振り向けば。



「今度、彼に会わせてくれよ」



朗らかに笑った壱成さんに小さく頷いてマンションを後にした。


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