【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


くしゅんっ



冷えすぎた室内が寒くて思わずくじゃみが出てしまう。



Tシャツから出た腕を触れば、ひんやりと冷たくなっていて、氷のよう。



寒さを和らげるために身体を擦る。



「ほら」



榎本さんが着ていた、シャツを肩に掛けてくれて、少し吃驚してしまった。



鼻を掠めたのは翔とは違うミントの爽やかな香りと、微かなタバコの香り。



「風邪引かれたら困るんだよ」



じっと見ていた私から視線を逸らす様に、台本片手に立ち上がった榎本さんは、再び演技指導を再開した。



シニカルに笑って「7時に終わらせてやるよ」と言った彼に、覚悟はしていたけれど、喜怒哀楽の表現方法を怒られながら指導されて、どっと疲れたのは言うまでもない。



…宮内さん似のスパルタめ。


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