濡れた体温ごと奪って


「母親はなんて言ってんだ」


「…返事…してないって……迷ってるってっ……っ…どうして…迷うの……やだ……っ…ぅ…」


「…紗耶」




紗耶は小さく肩を震わせながら必死に言葉を発してるのが伝わる。


目に溜めていた大粒の涙が紗耶の頬をつたって流れる。


手で一生懸命に大粒の涙を拭うが、拭いきれない程泣きじゃくる紗耶。


あのクソ野郎もそうだが…母親も母親だな。


気が付くと俺は紗耶を抱き寄せ強く抱きしめていた。



< 141 / 259 >

この作品をシェア

pagetop