素直に優しく―360日の奇跡―



少しずつでも良いからシンやメグを知りたいって思った。

二人や二人の友達ならもしかしたら信じられるかもしれないって思った。




「ヨリって飯沼?」


「なんで知ってんの?」


「ヨリの姉ちゃんの彼氏、俺の兄貴の友達だから。」




ふわふわ温かかった気持ちが一気に冷めた気がした。

――…シンも同じか。

心の片隅では違ってほしいって思う。

でも、頭ではシンもほかの奴らと同じなんだって思ってしまう。




「ヨリはヨリだけどなー。」




また何気ないような言葉だったのかもしれない。

それでも私はびっくりした。

ヨリはヨリ、なんて今まで言われた事なかったから。


いつも姉ちゃんを知ってる人は私を"ヨリ"じゃなくて"妹"って呼ぶんだ。

それが存在を否定されてるみたいで嫌だった。
"飯沼ヨリ"じゃなくて"飯沼美絵の妹"としてしか存在していないように思えてしまうから。




「ヨリはヨリ。姉ちゃんは姉ちゃん。つーか俺ヨリの姉ちゃん知らねぇしな。」


「……そっか。」


「おう。」




他校生だからかもしれない。

姉ちゃんを知らない人だからかもしれない。


だからシンとかメグと居ると楽なのかもしれない。



人間なんて信じないって再確認して何時間も経ってないのにシンやメグならって思った自分が確かにいたんだ。





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