素直に優しく―360日の奇跡―




泣きわめくセンパイをほったらかしに何も入っていないカバンを肩に引っ掛けてさっさと教室を出る。




「飯沼!またお前か!!」


「……うっさいよ。」


「教師にその口の聞き方は何なんだ!」




教室を出て階段に向かう途中、生活指導の教師がいた。

私は大人が嫌い。

大人だけじゃない。

人間が嫌いだ。




「いつもいつも…お前は問題ばっかり!」


「は?あっちが喧嘩売ってきたんだって。私被害者。」


「そんなもの信じられるか!」




もしかしたらほんの少しだけ期待をしていたのかもしれない。

いつかは私を見てくれて、私をわかってくれる教師がいるんじゃないかって。

だけど、この生活指導の教師の言葉で完全にそんな期待はなくなった。




「なら信じなきゃ良いじゃん。ちゃんと話も聞かないような奴に信じてなんて二度と言わないし。」




そうだ。
信じてもらえないなら信じなきゃ良いんだ。


――…こんな学校…二度と来るか。


それだけを思って廊下に置いてある机を蹴り倒しながら玄関に向かった。




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