爽やか抹茶Days~若様のお茶はいかがですか?~


屈み腰で私を見る諒ちゃんの目は凄く鋭くて、声もいつもより低くて。
今物凄く真剣なんだなとすぐに分かりました。


「鈍臭くて人よりのんびりしてて失敗する事も多いけど、その分あんたは努力してる。休みの日もそうだったけど夏の暑い日だって一人で練習してたしゃん。
あたしも陽も、それに八束先輩だってそれを見てた。だからあんたは今日ここでその成果を発表する機会を与えられたんでしょ。


それにただ努力するだけじゃなくて、完璧じゃなくてもその努力を実力にしてきた。
だからさっき先輩もあさかならって言ってくれたんじゃん。信用されてるんだよ。

努力も実力もなかったら、今日もさっきも今もなかった。自分が作り上げてきたものでしょう。あたしのいつでも聞ける様な励ましになんか頼るな。最後まで自分で作り上げてみな。

皆あんたを信用してる。けれどそれは100点満点を求めた信用じゃない、70点でも堂々とし続ける事だよ。今不安がることはあたし達の信用や先輩や先生の支えに疑ってるのと一緒なんだ。」


一気にまくし立てる様にそこまで言うと手を離して、最後に続けました。


「あたしは頑張れなんて言ってやんない。大丈夫も言ってやんない。
悔しかったら後で「諒ちゃんの励ましなんかなくても余裕だった」って言いに来れば良いよ。」

呆然とする私を残して今度こそ襖を開けて出て行ってしまいました。

かわりに開いたままの襖の端から顔を覗かせた双葉先輩が「大丈夫?」と声をかけてきました。


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