追いかけて…
1 進路

「あのさ…相談があるんだけど…」

千春はキッチンで料理を作っている母に声をかけた。すぐ近くのリビングには長女、次女、三女、四女がみんなでテレビを見ている。

「んっ?どうしたの?」

出来上がったばかりの料理をリビングに運びながら母は言った。

「俺さ…女子校に入りたいんだけど…」

その瞬間に話を聞いていた姉妹達は一斉に振り返った。

母は聞き返してくる。

「もう一回言って」

「だから女子校に入りたいんだって」

それを聞いた長女は笑顔になり、次女は冷たい目線を送り、三女は呆れたため息をつき、四女は腹をかかえ爆笑しだしてる。

「男子校の間違えでしょ?」

母は信じられない顔をして聞き返す。

「ううん女子校」

千春の言葉のあと、長女が楽天的に喋る。

「私にもう一人妹が増えんのかぁ!」

次女が続く。

「あんた野球はどうすんの?」

「高校でソフトボールやるからいいんだよ」

千春は言った。

「何でなの?」

三女は無表情のまま聞いてくる。

「約束だから…」

「うちはハルのこと応援するよ!」

四女はニコニコしながら笑っている。

母は言った。

「もう少しかんがえてみな。それと父さんにも話しなさいね」

「わかった」

千春はそう言うと急いで料理を口に運び、家族の誰よりも早く食べ終えて自分の部屋に戻った。
< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop