剣と日輪
天人五衰編決起
 益田総監は公威を待ちかねていた。自衛隊にとって公威は、
「平和」
 という美名の下に自衛隊を、
「違憲だ」
 と主張する共産主義・無政府主義者の理不尽な批判への楯となってきた。マスコミや教育界、文化芸能界の多数を占めるようになって来た共産主義・無政府主義者に洗脳されつつある国民に、真実の声を放ち続け、自衛隊を擁護してくれる希少な人材である。悪感情の持ちようが無かった。
 市ヶ谷台一号館陸上自衛隊東部方面総監室は、四十五平方メートルで、入室すると正面に半間幅で縦長の窓が三つある。外にはバルコニーがあった。バルコニーの下は車寄せになっている。窓は五十センチの高さにある。真赤な絨毯(じゅうたん)の上を五人は右手にある応接セットへと導かれた。晩秋の陽射とスチーム暖房が和みを増した。公威は益田総監と向い合って着座した。
 益田総監は公威だけが来るものと思っていたので少々勝手が違ったが、必勝達にも席を勧めた。だが公威は座らせない。
「この者達を連れてきたのは、一目総監に御目にかけようと思ったからです」
「そうですか」
「十一月の体験入隊の際、この四名は負傷した隊員を背負って山から下りて来てくれました。その行為を今日の楯の会の例会で表彰しようと思いまして連れて来たのです。この後例会に出ますので、制服を着用しています」
「うむ。立派な若者達ですな。自衛官にも見習って欲しいものだ。さあ、君達どうぞ。其処の椅子に腰掛けて」
「有り難うございます」
 必勝達四名は置いてあった小椅子を応接セットの周りに四脚配置し、腰掛けた。
 益田総監も公威が携行している刀に、目を留めた。
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