AVENTURE -君の名前を教えて-
「そんなに腹が減ってるのか?」

聞かれて首を傾げていると、彼は少し苦笑しながら答えた。

「うまそうな匂いをかいだだけで、そんなに嬉しそうな顔してるから」

言われて思わず顔をべしッと両手で挟んだ。


また会えて嬉しいとは思ってたけど、まさか顔に出てたなんて!


耳まで真っ赤になるのが自分でもわかった。が、それを止めることは当然できなくて、どうしていいのかわからず、ただ、視線を合わさないよう、俯くだけで精一杯だった。

「ま、人間誰だって腹は減る。自然の摂理ってやつだな。朝食まだみたいだし、一緒に食べるか?」

そんな私をおかしそうに笑いながら、朝食のお誘いを受けた。

自分がすごく食い意地の張った子みたいに思われていると思うと、そんなんじゃないと弁解したかったが、嬉しいと思った本当の理由以外で、うまい言い訳を思いつくことも出来なくて、私は泣く泣く諦めた。
< 27 / 242 >

この作品をシェア

pagetop