図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
駅までほんの5分間。

3人が・・・厳密には2人が美優に質問しまくる。


「血液型は?」

「O型だよ」

「誕生日はいつ?」

「9月4日だけど・・・」


もう、終わってんじゃん。

蓮はそんなことを考えながら後ろを歩いた。


「彼氏いるの?」


新の唐突な質問に美優が俯いた。


一番聞きたかった質問。


けれど、蓮は美優と新の間に割って入り、新を睨む。


「新!何聞いて・・・」

「振られちゃった」


美優の小さな声に3人は反応する。


「いや、いいから」


蓮がそう言うと「ごめん」と新が申し訳なさそうに呟いた。


「いいの」


そんな二人に美優が頭を左右に振ると一緒に揺れる髪が蓮の腕に触れる。


「うざいって、言われちゃった。すぐに泣く女は・・・」


3人は脚を止めて、彼女の声に耳を傾ける。


「別れようって言われて、泣いちゃって・・・。そしたらうざいって」


美優は顔を上げなかった。

蓮は懸命に言葉を探した。

そして、


「そんな男・・・・泣かせる男が最低なんだよ!」


やっと、言えた台詞。


「そうそう、美優ちゃん、こんなに可愛いのに!その男、馬鹿だね」


新が続く。


「俺が慰めて上げようか?」


そう言って美優の肩を抱こうとする祐介のに二人が蹴りを入れる。


「馬鹿はお前だ!」


二人が祐介にむかって叫ぶ。


美優が笑った。

その目の端に光るものがあったけど。



もう駅はすぐそこで・・・。



美優は「ありがとう」と手を振って改札口に消えた。
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