図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「まだ付き合ってんの?」
教室に着くなり、みことが不機嫌そうに美優に話しかけてきた。
美優は困ったように笑うだけ。
「また、泣きたいの?」
みことは腕組みをして美優を見下ろした。
「今朝、一年生の女の子に告白されてた」
美優の言葉を聞いて、みことは「ほらね」とでも言うように大きくため息をつく。
「駅前で堂々と・・・。あたしには出来ないなぁ」
美優は重力に惹かれるように椅子に座った。
「あっ、それ俺も見た」
二人の会話に入ってきたのは、いつかの図書室で告白未遂に終わったクラスメイトの荒木真也だった。
「ってか、俺も別れたほうがいいと思うよ。正直、篠宮のいい噂なんて聞いたことないし、今朝だって、裏路地にあの子連れて行って何してたんだか・・・・」
不安をあおるように言葉に、美優は机に伏した。
「もう、お昼も放課後も、図書室行くの止めなよ?」
みことが美優の髪を撫でながら言った。
「でも・・・」
「あと、1ヶ月もないんだよ。2月はほとんど学校に来ないんだから」
たった、それだけしかないからこそ、一緒に過ごしたい。
美優の目に涙が浮かぶ。
「どうしても、図書室に用があるときはおれが一緒についててやるよ」
美優は荒木の言葉になんの反応も示さなかった。