図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

外は薄暗く、夕日はすっかり沈んでいた。


そこに足早に駅に向かう彼女。

見間違えるはずがなかった。

長い黒髪を左手で耳に掛ける仕草。

この暗さで顔までは確認できないけど。


一人、私服の男が彼女に声を掛けた。

彼女は足を止める。


-なんだ、彼氏いんのか-


少し落胆はしたけれど、想定範囲内。

あれだけ綺麗なら彼氏の一人や二人・・・。

私服の男は破れたジーンズを腰ではき、耳には大きなピアス。

頭は帽子をかぶり、その容姿は蓮には分からなかった。

その男が彼女の腕を掴む。

彼女はそれを振り払おうとするけれど、それも出来ずにカバンを落とした。


「って、ヤバイんじゃね?」

「蓮?」


蓮は悪友二人を置き去りにしてカバンを掴んで外に飛び出た。

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