MAO【BL】
プロローグ


「マオ……ッ!」


屋上に虚しく響くこの声は、果たしてアイツに届いているのだろうか。


「約束、まさか忘れた訳じゃねーだろ!?」


それでもなお、フェンスの向こうのマオに必死で問い掛ける。

だけどマオは自分の爪先の、更にその下の景色を無表情に見詰めているだけで。


「マオ……ッ、頼むから……、俺の声、聞いてくれよ……マオ!」


マオは、何を考えているのかいつもわかんなくて、ホント意味不明なヤツで。

だからなのかどんどん目が、離せなくなって。


マオの中身がわからなくて、知りたくてしょうがなかったけど、今ならわかる。

マオが、これからしようとしていること。


マオの方へ、一歩踏み出そうとした時だった。


「怜(リョウ)」


小さく、だけどはっきり、名前を呼ばれた。


< 1 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop