恋がしたくて…
自惚れ
どうしよう…。

人混みの中で、佐々木さんの 後ろ姿を見送る私…。

どうしよう…。


地下鉄の階段を降りて行き、姿を消した 佐々木さん。


嘘でしょ!?

心の中で 叫んだ私。


絶対に…。

絶対に 振り返ってくれると思っていたのに!


あたし。
うぬぼれてた。


「どうしよう…」
なんて、考えてる場合じゃなかったんだ。


久しぶりに 口説かれて。
久しぶりに 女性扱いされて、
すっかり、舞い上がってた。

心のどこかで、
『男性は いつまでも 追ってきてくれるはず』
なんて、思ってた。

結婚前の 女性じゃあるまいし…。

そんな風に 姫扱いしてくれる訳ないよね。

我がままが武器にできるのは、
若さと 美しさを持った女性のみで、
しかも相手は 餓えた若者に限る。

血気盛んな若者じゃあるまいし、
佐々木さんみたいに、余裕のある中年男性が、そんなに すがってまで、口説いてくるはずない。



馬鹿みたいだ あたし…。

勘違い はなはだしい。

一人で いい女になった気でいた。
< 83 / 150 >

この作品をシェア

pagetop