戦国千恋花
戦場の想い
――…耳に響く、
つんざくような悲鳴。

土に染み込む赤い鮮血。
此処は一体、何処?

恐怖に震えながら、
辺りを見回す。

「…っ!!」
叫び声を上げてしまう前に、なんとか口を塞いだ。

私のすぐ隣には、人の亡きがらがあった。

まだ幼さの残る、15、6歳の少年だった。

額には、
丸い形の中に四角の、ちょうど銭のようなものが六つ描かれた、紅い布。
何故、こんな処に…?

改めて周りを見渡すと、辺りには少年以外にも

何十という数の亡きがらがあった。

人の気配はないが、
遠方から太鼓やホラ貝の音が聞こえる。

恐怖に息を潜め、此処から逃げなくてはと機会を伺っていると、

ふと右手に違和感を感じた。

「…っ!!?」
恐る恐る右手の方を見ると、

亡きがらだと思っていた少年が、
息も絶え絶えに私の手を弱々しく掴んでいた。

少年の眼は、何かを訴えていた。

私は、この手を振りほどきたい気持ちと

少年の最期の願いを聞いてあげなくてはいけないと思う気持ちと

人の死を間近に感じている恐怖とで、

微動だに出来なかった。
< 5 / 17 >

この作品をシェア

pagetop