お伽話をキミに。
そんなことを考えながら相変わらず郁を眺めていたら、あんまこっち見んなと郁からチョップが飛んできた。
いてぇよ、バカ郁。
ブツブツと文句を言い郁から視線を外すと、俺は机のうえに上半身をだらけさせ再び漫画を開く。
開いたページに載っていたのは、今月のお気に入りシーンで。
透に可愛いと言われて素直に照れている桜が無償に可愛い。
「あー桜まじで可愛い。こんな彼女欲しい」
漫画を見ながら洩れる溜息。
何回見ても可愛い。
どっかにいないのか?
こういう真っすぐで純粋な俺のエンジェル。
「俺のエンジェルとか言うな。気持ち悪い」
「あれ?俺声出てた?」
「あぁ」
心の中で呟いたつもりなんだけど。
でも本音だからなぁ…と俺が一人呟けば、隣で郁が呆れたように溜息を吐いたのが聞こえた。