Last Sound





「工藤先生、あたなにはプライドというものはないのですか?」

校長の言葉に思わず顔を上げ、思い切り睨んでしまった。



「プライド?」


「そうです。


軽音部のためにあなたはそこまでした。

いくら彼らの力になりたいからって土下座までしますか?普通」


「…なら俺は普通じゃないんでしょうね、きっと」


ふっと軽く笑う。



「それに、プライドなんて生徒のためなら喜んで捨てますよ。

こんなちっぽけなプライド、要りませんから。


俺は…アイツらの笑顔が見られれば。

それだけで、十分なんです」


きっと、俺はバカなんだろう。


ちっぽけでも、俺にだってプライドはあるんだ、やっぱり。


生徒のためなら喜んで捨てる。

この言葉はウソじゃない。


だけど、それでも俺の心は今にも折れそうで。

なんて脆いんだ、俺は。



「…分かりました。

もう1度、検討しましょう」


しばらくの沈黙の後、丸山先生がそう言って。

俺は立ちあがると



「失礼しました」

そう言って、校長室をあとにした。


きっと…俺の決意は無駄に思ったんだろう。

だって大人の『検討します』は

一応、の言葉であって、

検討なんてする気なんてサラサラないんだ。


俺だってだてに社会人をやっているワケじゃない。

それくらい、知ってんだから。



…ちくしょう。

やっぱり俺、アイツらのためになんもしてやれねーのかよ…っ!!









◆エトー目線 終◆








< 172 / 223 >

この作品をシェア

pagetop