シャーペンと君とあたし



「……教室戻るか?」


孝太は立ち上がる。



その横顔は

いつになく、切ない。


─…あたしが黙り込んだせいだ。




咄嗟に、孝太の体操着に手が伸びて

ギュッと裾をつかむ。



「……鈴乃?」



何も言えなかった自分が悔しい。

助けてもらってばっかで
あたしは何もしてあげられない。


だけど。だけどね、孝太?



「あたしは孝太が好きだよ。」



例えクラスの子が

“嫌い”だと言ったとしても


胸を張って言える事実だから。




俊も、蒼も、宏人も、孝太が大好きだよ?



──…信じて、孝太。



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