モザイク
循環する感情
カナの父親は祈っていた。ただ、ひたすらに。神に祈りは届く。そう信じて祈っていた。

しかし、たった一人の祈りと人間を除く多くの動物や植物たちの願い。神がどちらを聞き入れるのか、考える必要はなかった。
その証拠に世界はモザイクにどんどん染まっていく。そこに躊躇いは感じられない。

それを神宮寺は感じていた。
「おいおい、本気か・・・?」
喉の奥が痛くなった。きっと涙を無理矢理堪えたせいだ。
「嘘だろ、嘘だと言ってくれよ。」
天を怒鳴りつけた。しかし、それは虚しく響くだけだ。けっして戻らない。
「なんなんだよ、この世界は。」
四つん這いになりうなだれた。

さっきまで太陽のように眩しかった神宮寺の愛車は、ちらつくオレンジのモザイクに変わっていた。どこがドアで、どこがタイヤなのか、そんなのはわかりもしない。
ただ側にある水着のポスター、それがここに車を停めたのは間違いないと告げていた。

神宮寺の見ている景色が変化し始めた。うなだれアスファルトを見ていた神宮寺は、諦めに似た気持ちになった。
<俺も感染したか・・・。>
しかし、違った。
最後にもう一度だけ太陽を見上げた。その太陽が思い切り輝いているのがわかる。
「見える、太陽が見える・・・。」
感染したと思いこんでいた神宮寺の驚きは尋常ではなかった。
そして再び地面を見る。理由は簡単だった。足下のアスファルトがモザイクに変わっただけだったのだ。
「そうか・・・。違うのか・・・。」
モザイクが拡がっていく事実より、感染していなかった喜びの方が大きかった。ただ全く気にしないと言うわけではない。神宮寺の上げた声は、喜びとも哀しみともとれた。
「さて、これからどうするか・・・。」
車は無くなった。周りを見るとモザイク七割、普通の景色が三割と言った感じだ。人の姿は見えるが、全くモザイクになっていない者を探すのは大変そうだ。これでは交通機関の類も正常に機能しているとは思えない。
「まず、バスは使えないだろうなぁ。」
すぐ側に緑と白が大部分を占める大きなモザイクがあった。この辺のバスは皆、緑と白で塗られている。十中八九、このモザイクがバスと見ていいだろう。
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