モザイク
太陽を掴む
大地は震えた。

「なっ、地震?!」
神宮寺は叫んだ。
「先輩っ。」
桜井はその場に跪き、神宮寺を呼んだ。すると、目の前にいる神宮寺の姿が遠くなっていく。脆くなった病院が崩れ始めたのだ。桜井と神宮寺を引き裂くかのように、廊下に大きなヒビが入った。
「桜井っ。」
神宮寺は手を伸ばした。が、届かない。それどころか距離はいっそう開いていく。
「うわああああああ。」
廊下は崩れ、神宮寺はものすごい勢いで落下した。
「わあああああ。」
すぐに桜井も同じように落下した。そしてふたりの上に、無数の瓦礫が降り注ぐ。
かき氷を食べる時を想像して欲しい。スプーンを突き立てると、シャリシャリといい音を立てる。そんな音が聞こえた。
いつしかガラスの山が作られ、その山は自身の重さに耐えかね潰れた。実に耳に心地よい音だ。人が死んでいく音が、人の耳には心地よく聞こえるとは、なんたる皮肉だろう。
そして、砂となった。ガラスは砂と変わり、そして風に舞った。太陽に照らされ、キラキラと輝いている。様々な色が混じった砂の舞い。まるで、万華鏡のようだった。

「地震だ。」
カナの父親はそう言いながら立ち上がった。そして走った。と言っても、揺れが激しくなかなかまっすぐには走れない。それでもカナの元へと走ろうとした。
「カナ・・・。」
例えどんな姿になろうと、娘への想いは変わらない。だから、走り続けた。

それはカナも同じだった。
激しい揺れに、父親の身を案じた。
「お父さん・・・。」
父親の元へ向かおうと立ち上がった。天井の照明が激しく揺れ、まるで「行くな」と訴えているようだ。
「お父さん・・・。」
カナは大きく右によろけ、壁に頭をぶつけた。でも、痛みは感じない。父への想いが痛みを消してくれていた。
うまくバランスが取れない。カナは元々運動が出来ないほうだ。それもあるのだろうか。しかたなく四つん這いになり、父親の元を目指した。
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