紳士的なLady
「あれだねっ!!剣はさ、優しすぎるんだよ!ねぇ?」
私が立っている踊り場まで、降りてきた彼女、羽賀鈴音はそのまま私の首に手を回してくる。
それを軽く振り払う私。
「ひどーい。さっきの…えーっと……誰だっけ?えっと……」
「澤田さん」
「そうそう!澤田さん!澤田さんにはハグしてあげたのにー!!てか普通ハグなんて頼むー?」
「普通なんじゃない?この前も私したし」
「それって軽く浮気になっちゃうよー?」
「浮気とかにならないと思うけど」
「はあ。剣はお人好しだねー」
そう言いながらも、ぎゅうっと私に抱きついてくる鈴音。
「鈴音、暑い。離れて」
「いーやーだ」
「邪魔。鬱陶しい。暑い」
「あ、暑いって2回言った」
「いいから。離れて」
ぶーと頬を膨らませる鈴音。
それを宥めるように後ろから鈴音の頭を撫でる手が伸びてきた。
「ほーらっ!剣ちゃんも鈴音も仲直りしよっ?ねっ?」
「そうだよ!剣、謝れ!」
「はいはい。ごめんね」
苛々した気持ちを落ち着かせるためにもう一度息を吐く。
目の前には鈴音にべったりの馬鹿、小野寺壮貴が立っている。
「で」
2人を見ながら私は声を出す。
「何で2人が居るの?」