紳士的なLady
くすぐったくて。
あまりにも彼の声が優しすぎて。
溶けてしまいそう。
耳に直接流れてきた「満原」と呼ぶ声。
彼の声が、こんなにも優しいだなんて、知らなかった。
ただ単純に名前を呼ばれただけなのに。
まるで、自分が大好きな曲を聴いているような感じがして。
耳が、脳内までが、彼の声一つで麻痺してる事を、実感してしまった。
でも、今の状況って……。
何だろう?
私の後頭部を彼の左手で固定され。
彼の右手は私の顎を掴んでいて。
彼は、私が今までに見た事無いような、真っ黒と言う言葉がぴったりの笑顔を浮かべている。
意味が分からない、と眉をひそめて彼の顔を見上げた。
その時だ――。
私の視界には、目を閉じた彼が映っていて。
プラス、私の唇が、何かで塞がれていたのだった。