紳士的なLady




「じゃあ、私たちもそろそろ帰るね」



時計を見ると、針は既に5時を回っていた。




「そっか。もうそんな時間か……」

「離れがたいね」




鈴音がそんな事を言うと、余計に悲しくなる。




「また来るでしょ?」

「だけど剣学校に居ないもん。結構寂しいよ」




私だって、寂しいよ。






「私はすぐに学校に戻るって!暗くならないうちに帰りなよ」

「うん……。じゃあ、またね。剣ちゃん」






「バイバイ」











カラカラと、小さな音を立ててパタンと閉まるドア。



人が居なくなった後の静けさは、怖い。






自分の動きの一つ一つだけが音を立てるのは、何とも心細い。




寂しがり屋なんだな、私って。







窓の外から、鈴音と千波の後ろ姿が見えた。


私も学校行けたら良いんだけど。







すると。








「剣ー!!」




窓の外から鈴音の声。





顔を出すと、小さく見える2人が手を大きく振っている。







「早く治ってねー!!」








口元がふっと綻ぶ。





「ありがとーう!!」


小さい2人に負けないように、大きく手を振る私。




「あ、剣ちゃーん!」





千波がもう一言と、付け加える。





「今から架月くん、来るからねー!」


「えっ?!」











ガラリと勢い良くドアが開いた時には既に遅く。





「何やってんのお前」




呆れた表情で、もう何度目かと思うような笑顔を浮かべたのだ。





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