紳士的なLady
階段を、袴を踏みつけないように、ソロリソロリと降りる。
やっと1階へ着くという時だった。
1人の女子が、猛スピードで、階段を駆け下ってきた。
ノートや大量のプリント、筆箱を持っている。
何かの係の子だろう。
そのまま私たち3人の横を過ぎ去って行こうとした。
ところが。
「あっ」と彼女の小さい声が聴こえた。
私の目の前を、グラリと前のめりになって、ゆっくりと過ぎて行く。
危ない――!
袴を着ているにも関わらず、その女子の腕を掴んで、ぐいっとこちらへ引っ張る。
女子の慌てた顔と、ばらまかれたプリントの白が目に映る。
「満原さ――」
先程よりも小さな声で、私を呼ぶ声。
自分の身体が、後ろへ倒れていくのが分かった。