オモイビト
『視線を合わせちゃいけない』
『合ったら殺される』
『先生も怖くて手出しができないらしい』
『怖くて王子に近づけない……』
そうだ、王子はみんなから知られているけど、基本的に誰も近寄っていかない。
そう、コイツがいるから、みんな恐れてる。
『助ける』って、そういうことなんだと思う。
あたしと陽紀が一緒にいるだけで、誰からもなにもされることがないだろう。
ただし、陽紀自体はなにもしていない。
こんなの陽紀にとったら朝飯前……いや、朝飯以前の問題だ。
なにもしなくても夕飯まできっちり食べられるはずだ。
朝飯前になにかすることもないほどに。
「話はそれだけ?」
「まぁ、そうだな。お好みならまだ話してやってもいですぜ?」
「ぜひ遠慮しよう」
……笑われた。
「お前面白い。気に入りました」