成熟と化して



それから何日か経ち、紙田から伝言があったのか、お母さんは盛り上げ部の部室に来た。赤ちゃんのお母さんが迎えに来た。

どうやら仕事の都合で他県に行かなければならず、身内もいないので、困り果ててるときに、偶然隣人の紙田が、通りかかったらしい
そして―
「俺が面倒みましょう」

とかっこつけたさに、引き受けたという。

しかし、そのかっこつけの紙田はいなく、いるのは佐藤と赤ちゃんと赤ちゃんのお母さんだけだった。

「ありがとうございました」

笑顔でお母さんは佐藤に頭を下げると、部室を後にした

佐藤も笑顔で見送り、姿が見えなくなったところで、ドアを閉め、ソファに座った。

―本当に、疲れたな…

ふとテーブルを見ると、いかがわしい本の表紙が少し見えていた


―なるほど…。顔がこの人に似てたから引き受けたわけね

納得し、少し微笑んだ。

―さ、見舞いでもいくか


携帯を見て、時間が3時になると、佐藤も部室を後にした。


行った先は、病院。
ここら辺では一番大きい病院だ。

佐藤は一室の病室で足を止め、ノックをした
「どーぞー」

中からは紙田の元気な声が聞こえた。
それに少し安堵し、病室に入った。


「おお、お前か」

「今日、赤ちゃんのお母さんが迎えに来ました」

「美人だったろ?」

「はい」

「ボンキューボンだったろ」

「そこまでは見てません」

「なぜ哺乳瓶で俺を殴った?」

これが本題だろう。
少し声が低くなった

「イラついたからです」

「なるほど。じゃあ仕方ない」

すぐに納得し、また元の間抜けな声に戻った。

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