成熟と化して

―放課後。

「フフフ…」

毎度お馴染みの笑い声を発しながら、紙田は双眼鏡で佐藤を監察していた。

今から、作戦を実行するからだ

「…上手くやれよ。佐藤」


一方佐藤は、特に緊張をせずに、一人で下校している上野に近づく

―出だしが肝心だよな。これ

「あ、あの、上野くんだよね?」

普段とは違う、猫を被っている声で上野に話しかける
上野は佐藤の方を見て

「うん、そうだけど…」

怪訝な顔で佐藤を見る

「上野くん、テニス部だよね?」

「そうだけど」

「俺、テニス部に好きな奴がいるんだけどさ、協力してくれない?」

と、前回学んだことを無視し、何とか上野に近づこうとする佐藤。

「テニス部って…男子だけだよね…?」

―しまった!!

―今から…ソフトテニスと言い直すか…。いやだったら上野くんと関係ないし

「ははーん」

上野は何か納得したようだった。

「顧問の橘先生だろ?」

橘先生とは、若い、女の先生だった

「そうだよ…ハハハ」

「わかった。でもあの先生、めちゃくちゃ怖いぞ?」

「そこがいいんだ!!」

「…M?俺が何とか仲取り持ってやるから。佐藤くんもがんばれよ」

「ありがとう」

―よかった。めちゃくちゃいい人で

それが上野の第一印象だった

< 9 / 202 >

この作品をシェア

pagetop