孤独の天使―Silver Angel―
みんな見ず知らずのちっちゃな国には行きとうないみたいで、"タダ"という単語にもつられはせえへんかった。

『あの留学先ね、あたしの母国なの。だから、あの企画に便乗して、あたしそろそろ帰ろうかなって。ねぇ、サラ。一緒に行かない?』

そう、リアンは留学生なのだ。
本名はリアン・マクロス・ツェスター。

『リアン、あそこが母国やったんか。てか、帰るっちゅーのはほんまかいな?』

『うん。だから一緒に来てくれないかな。』

リアンに行かれてしまうと困る。なにせ、あたしには友達がリアン以外にいないから、リアンが行ってしまうと、一人ぼっちだ。

『おぅ。わかった。行くで。リアンに消えられると困るんや。』

『ふふっ。ありがとう、親友。』

『気にせんでええよ、親友。』

明日、母さんに電話せなあかんな。

あの母親のことやから、寂しがらんとは思うんやけど。

『ほな、明日な。お休み。』

『うん。お休み。』

あたしの部屋の前でリアンと別れる。



この時あたしは、聞いたこともないような小さな国への留学が、あたしの人生の歯車を大きく狂わせることになるなんて思いもしなかった。

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