文系男子。

しる



[木月]

ムシムシする。
今日は真朱はいない。
イライラする。
今日はテスト1日目。

「…かっちゃん」

「……あ?」

「早くソレ解いてよ」

トントン、と隣の谷内がサギョウヘンカクカツヨウだかヨダンカツヨウだかのプリントを叩いた。

「…真朱の方が教え方上手い」

「あ、なに、そういうこと言う。それじゃ俺教えないかんね」

「あーうそうそ。ごめんね谷内」

「暑い!イライラするから寄るな!」

下敷きでパタパタと扇いでやると、谷内は大人しくなった。

「…本当、お前真朱のこと好きだよね」

溜息と共にそんなことが言われた。

「好きじゃねーっつのライク」

「英語出来ねえクセに…」

「んだと?!」

喰ってかかると、暑苦しい、と谷内が不機嫌そうに言った。

「んはー…」

弓道部、1年は、俺と谷内と真朱、他2人の5人しか入らなかった。
先輩たちは沢山いるのになー、と何時も思う。

俺ーーー木月褐太朗(キヅキカツタロウ)、土器高校普通科。理数系。
隣に座るのはーーー谷内藍白佑(ヤウチアイジロウ)、同じく普通科。文系も理数もイケるオールマイティ。就職組なので特進科には行っていない。

見た目は、どうだろう。

自分で言うのもなんだか嫌だが、ある程度モテる。
告白されたし、お付き合いも何度も経験したことある。
髪型もある程度気を使う。服も普通に。
谷内はーーー坊主だ。
モテはしないが、密かにファンがいるのは知っている。

「だって真朱可愛くね?」

「可愛いけど、友達止まりかなー。髪ショートだし」

そこかよ。
男は皆髪は長い方が良いんだろうか。

「あーそうかよ…くそ、あっちーな!」

「水でも浴びにいく?」

「良いな、それ」

ニヤリと谷内と笑い合うと、席を立って外に飛び出した。



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