文系男子。
[真朱]

「これって…人質ですか?」

あたしが松葉に問えば、真朱さんが嫌なら即刻家まで送るけど?とにっこり笑いながら言われる。

「…嫌では無いですけど」

大きな騒ぎにしないで下さいね。

「そりゃ、勿論。もし騒ぎになったらうちの組が総力を上げて揉み消すさ」

ウインクなどをされて、あたしは目の前にいるのがほんとに危ない人なのかどうか分からなくなった。

「…らしくないですよね」

「ん?」

「全然、そっちの人って感じじゃないですよ」


「ああ、ヤクザっぽく無いってこと?」


なるべく伏せていた単語を思いっきり出されて思わず固まった。

「…丁子、もっと気ィ使えよな」

赤頭の言葉に松葉は目を瞬かせ、慌てた様に言った。


「え、…ああ、ごめん、あ…うん、普段そんな単語聞かないよね、怖いよね、ごめんね」


あたしよりずっと年上なのに、その慌てて謝るのが、何だか可笑しくて、笑ってしまった。
松葉はあたしを見た後、照れた様にはにかんだ。

赤頭は、窓を開けて、顔を外に向けると、煙草を咥えた。
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