先生との恋☆Second・Story☆完結☆

「大丈夫。俺が会わせないから。今まで通りここにいて。逃げようなんて考えなくていいから」


大丈夫だから。

落ち着かせるようにそう言う聖くんに安堵の意味での涙が零れる。


ほら、と両手を広げた聖くんに、そのまま倒れこむように首に手を回す。


胸に押し付けた顔。匂うのは、お菓子の甘い匂い。

今日は、真っ直ぐに帰ってきてくれたんだ。

「苦しいな…。苦しいよな…」

あたしの後頭部に手を置いて、力を込めて抱きしめながらぽつりと言った言葉にはぁ、と息が漏れる。

「こんなふらふらなのに、逃げようとするなんて…」

私は聖君の胸に力なくすがりつく。


耳に残る、困惑した高橋の声。必死な高橋の声。


「…声」


「え?」

「高橋の、声。なんかおかしかった…」


「声?」


上から落ちてくる疑問の声に、思い出す。

最初は気付かなかったけれど。


「…掠れてた」


「そっか」

うんと頷けば、ぐっと聖くんの腕の力が強まる。

「今はゆっくり休みなさい」

そう言われて、一気に力が抜けていく――――













< 265 / 382 >

この作品をシェア

pagetop