さよなら異邦人
 ケータイ小説大賞からは、すでに多くの作品が書籍化されていた。


 賞に選ばれる事以上に、自分の作品が一冊の本となる事が魅力であった。


 自分が書いた物を本にするだけならば、自費出版という方法もあるが、大学受験を控えた娘と息子を養って行かねばならない私にとって、それは非現実的な選択であった。


 私が小説大賞にエントリーしようと思ったもう一つの理由は、主催者側から発表されたテーマにあった。


【青春】


 なんとも広義なテーマであろうか。


 だが、これならば設定はかなり広範囲に広げられる。


 私は、『さよなら異邦人』と題名を付けた作品を書き始めた。


 時代は現代。主人公を肉付けして行く為のモデルなら、丁度我が家に娘と息子が居る。


 子供達の会話を断片的に繋ぎ合わせ、私は書き進めて行った。



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