さよなら異邦人
その子を起こさないように奥の茶の間に行った。

いつも通り仕事に行っているのなら、父はこの時間に居る訳が無い。

昨日の夜はちゃんと家に居て、僕の部屋で眠っている女の子は連れ込んでいなかったから、学校へ行っている間に連れて来た事になる。

前もそんな事があったから、別段その事に驚きはしない。

でも、いつも以上に憂鬱な気分になりながら、僕はする事無しにごろりと横になった。

見知らぬ女性が家に居る事自体は慣れっこだけど、僕のベッドで寝ているなんて事は初めての事だったし、しかも勝手にTシャツまで着られている。

憂鬱の原因はそれも勿論あるが、歳が近過ぎる事が一番の原因だった。

一回り以上離れていると、割かし気にせず一緒の空間にいられる。

年齢差が近くなればなった分、僕の憂鬱度は比例して高くなるという訳だ。

汗ばんだ制服のポロシャツを着替えたかったのだが、そうする為には自分の部屋に入らなければならない。

頭の中に何度も褐色の太腿が浮かんで来た。

やばい……

妄想が膨らんで来そうだ。

頭の中から寝姿を必死で消そうとした。

でも、意識すればする程、露になった健康的な太腿が浮かんで来る。

僕は、自分がむっつりスケベだと自覚している。

そこだけは父に似なかったようだ。





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