さよなら異邦人
 TURUKOさんからは、その後も書き込みが無かった。


 その理由というか、彼女が誰であったのかを知ったのは、偶然の事からだった。


 買い物に出掛けた妻が、自分のケータイ電話をテーブルの上に置き忘れていた。


 メールの途中だったのか、画面が何かを表示しているのが見えた。


 何の気なしに覗いたそこにあったもの……。


 私は漸く全てが飲み込めた。


『……最初の頃から作品を読ませて頂いて居りました』


「あなたがケータイ小説を書いていたの、ずっと前から知っていたわ」


 淳子、お前ってやつは……



 買い物から戻り、夕食の支度を始めた妻に、


「なあ、今度ラベンダー、買って来ないか?ベランダでなら大丈夫だろ?」


 ゆっくりと振り向いた妻は、


「ええ」


 と、無邪気な笑顔を見せた。


      おわり


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