本命になりたい
スパークリングワイン
「あぁ、またか…。」ため息交じりにそう言って香織は携帯を閉じた。

メールの相手は友達を介して知り合った男性。何度かデートを重ね、お互い惹かれ合っていた。

二人ともお酒が好きで、よく会社帰りに飲みに行っていた。彼は違う会社だったが、わざわざ香織の会社の近くまで飛んでくるような人だった。

身を預けたのが金曜日。
お互い惹かれ合っているから問題はなかった。

そして今日、土曜日に話は戻る。

「お互い惹かれ合っている、じゃなくて惹かれ合っているものだと思っていたって感じかな。」とブツブツ言いながら冷蔵庫を漁る。

メールの内容はこうだ。
「言葉が過ぎるかも知れないけど、昨日は酔った勢いだということで忘れて欲しい。実はもうすぐ結婚するんだ。本当にごめん。」

「チーズしかないや。明日は買い物だな…。」と言いながら、スパークリングワインの栓を開ける。
「ポンッ」と音がして、良い香りが鼻孔をくすぐる。ワイングラスに豪快に注ぎ、一気に飲み干す。

「シャンパンはシャンパングラスで品良く飲むけど、こんな時はこれが一番。」
まるで炭酸水でも飲むかのように、あっと言う間にスパークリングワインはなくなった。
そして香織はベッドに横たわり、携帯の履歴を削除し始めた。彼との事を脳内から削除するように。
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