きみのとなり


多分この時間は、おばさんがパートから帰って来る時間だから

慌てて帰って行ったんだね。




「……っ…あれ?」



おかしい。



「っ…」



私…




泣いてる…




私は、流れる涙を自分の指で拭いながらドアを開けた。




「未来ー帰ってきたの?さっきねーお隣り電話して夕飯誘おうと思ったんだけど出なくて。未来見てきてもらえない?確かに拓海君が帰ってると思うんだけど……未来?」




私はお母さんの話を無視して自分の部屋に入った。




そしてベッドに寝転び、誰にも聞こえないように声を殺して泣いた。




もちろん



窓は開けない。



カーテンは閉めきったまま。




「っ……」




春はマンションの下にある桜



夏は花火



秋は虫の声を聞きながら、夕日を



冬はベッドの毛布を被りながら、満天の星空を




でも…もうベランダに出ることはないよ。



全部、全部……もうできないこと。



もう……夢はおしまい。




拓ちゃん…おしまいにするね…










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