きみのとなり


家のドアを開けるとカレーの匂いが鼻をくすぐった。




「ただいま!今日はカレー?」


私は夕飯の支度をするお母さんに駆け寄った。



「正解。ほら、手洗って来なさい」



「はーい」




私は笑顔で洗面所へ向かった。



大丈夫



大丈夫



拓ちゃんがいなくても平気




平気…



「未来?カレー冷めちゃうよ?」




「あ…うん…今行く!」




私は出しっぱなしにしていた水を止めて食卓へ戻った。




「……」




また…拓ちゃんのことで悩んでる。




もう考えるのは止めよう。




「未来ー?」



「…あ…え…」



お母さんが不思議そうに私を見つめる。



「未来、どうしたんだ?」



お父さんも。




「あ…何でもない…い…いただきます」




私はあははと笑ってスプーンを握った。




もう…止めよう…




「おいしい」



「でしょう?」



「うん…おいしい…」




私は涙を堪えてカレーを食べた。






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