紅い煙草と鉱石人形
 「いくらだ?」

 いつもの調子で問いかけ、紫苑は黒い外套の胸ポケットからブルーグレイの眼鏡を取り出し、目元にかけた。


 その一連の仕草を間近で見て、

「…あいかわらず、賞金稼ぎにしとくには、惜しい容姿ね」

溜め息まじりに露花は呟く。


「ーなんだ?いくらだって?」

「…相変わらず金の事しか考えてないわね…」

先程とは違う意味で、再び溜め息まじりに露花は呟いた。



 紫苑は嫌な予感がした。

いつも、中央都公安局の警備部長である露花が〝裏情報がある〟と、
紫苑の前に現れると、ロクな事がない。

 
今までも露花のいう〝裏情報〟を元に、紫苑が動いていると、
イイ所で露花が公安の手柄にサラって行くのだ。


裏でも、公安の警備部長は若い[裏では20代前半か後半かで意見が分かれているが]女の割にやり手だと、もっぱらのウワサだ。
 

 今回もそうに違いない。

そう思いながらも、紫苑は露花の誘いにのった。

(何時もの様にいくと思うなよ)


今度こそ、露花の裏をかいてやろうと、心に秘めー…。



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