【完】ポケット-幼なじみ-
こんな場面[シーン]なんて見たくなんてないのに、足が全く動かない。
早紀役の女優さんが目をつぶり、はる君はまず、額にキスをしてから唇にキスをした。
―――近くでなんてみなければ良かった。
こんなことになるなら、来なければ……良かった。
やばい…………泣きそう……。
こんなとこで泣けるわけない。
もし、はる君が私がいることに気付いてたら――…
………気持ち、ばれちゃうよ。
胸が張り裂けそうなくらい痛くて、ぎゅっと服をつかんだ。