一瞬の永遠を、きみと

「朗、海を見たことがないの?」

「ああ。写真でならあるんだけど」

「だから見たいんだ」

「うん」


朗が小さく笑う。

顔は見えないけど、なんとなくわかる。

今、笑ってるんだろうなって。


「青くて広くて、写真でだってあんなに綺麗だったんだ。本物は、どれだけすごいんだろうな」



向こうにある駅から、真っ赤な車体の電車が向かってくる。

それが横を過ぎるとき、ざあっと温い風が吹いた。

草の匂いがする、そう思ったら、「草の匂いがする」、朗が同じことを言ったので、少し笑った。
< 151 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop