好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

病院に着いたのは、午前十時を少し回った頃。


私と直也は、受付で教えて貰った二階にある『集中治療室』に向かった。


そこで、ハルカは治療を受けているという。


気ばかりが急いて体が付いていかず、足がもつれて転びそうになってしまう。


そんな私を、直也が傍らで支えてくれる。


一人じゃなくて、良かった。


私一人だったら、無事病院に辿り着けるかも、怪しいところだ。


ドキドキと、大きくなるばかりの不安を胸に、一歩一歩足を進める。


集中治療室のドアの前。


壁際に置かれた長イスには、おそらくはハルカのご両親だろう、中年の男女が肩を寄せ合うように座っていた。


そして。


その傍らには、ドアをじっと睨み付けるように佇む浩二がいた。


その横顔には、明らかに疲れの色が見て取れる。


それどころか、この一週間で、またやつれたように感じた。


――ダイエットなんて、嘘ばっかり言って。


本当、バカなんだから……。

< 154 / 223 >

この作品をシェア

pagetop