好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
ドキドキと早まる鼓動。
私は、動くことも振り返ることもできず、その場で立ちすくんだ。
確かめるのが怖い。
もしも、もしも――と、最悪の状況が浮かんでは消える。
不意に。
フワリと、大きな手が私の頭を優しく撫でた。
視線を上げると、そこにはメガネ越しの直也の穏やかな瞳。
「あの、ハルカさんの容態は?」
私たちの横を通り過ぎようとしていた看護師さんに、直也が声をかける。
根性無しに、私が聞けないでいたことを、直也が変わりに聞いてくれた。
『容態は、安定されましたよ』
看護師さんの、その言葉が耳に届いたとたん。
私は、その場にへなへなーっと、座り込んでしまった。
もう、腰砕け状態で、立ち上がれない。
「よか……った」
怖かった。
もの凄く、怖かった。
このまま、もしもハルカに万が一のことがあったらって、本当に怖かった。
「よかったな」
座り込んだままの私の目線にあわせて、かがみ込んだ直也が、優しい笑顔を向けてくれる。
私は、胸がいっぱいで、ただただ、何度も頷いた。