好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

それなのに、素直に喜べない私って、どう言うんだろう?


「亜弓?」


「あ、ううん、ゴメンね。急だったから、ビックリしちゃった……」


アハハと、思わず笑って誤魔化してしまった。


驚いたのは、嘘じゃない。


ただ、彼のプロポーズに驚いたんじゃなくて、自分自身のこの反応に驚いた、って所が微妙だけど……。


普通、五年も付き合った恋人に結婚話を持ちかけられたら、ルンルンと無条件で嬉しくなるモノじゃないんだろうか?


確かに、直也が、私のことを真剣に考えてくれているんだって、そう感じられて、嬉しいんだけど。


このモヤモヤは、いったい何なの?


まるで、喉の奥にサンマの小骨が引っかかった時のような、この心の隅っこのモヤモヤ~っとした感じは……。


『長すぎた春』のせい?


それとも。


『早すぎるマリッジ・ブルー』とか?


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