好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「あ、あはは。俺の分は、ツケといてね!」


「ここは、飲み屋じゃないんですけど、浩二君?」


「ああっ、ハルカちゃんのいじめっ子ー。昔は、あんなに素直で可愛かったのにー、おじさん悲しい。あ、今も可愛いけどね」


へらへら笑う浩二に、伊藤君が少し凄みの効いた眼光を向ける。


「浩二、いい加減にしろ。ここは漫才する所じゃないぞ」


「ああっ。無二の親友まで、ボクをいじめる~」


和やかな笑いに包まれる空間の中で。


私は、今、どんな顔をしているんだろう?


笑っているはずなのに。


そうに違いないのに。


心の奥で。


もう一人の私が泣いていた。




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