好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「亜弓、お客さんよー」
ベッドの中で、そんなことを悶々と考えていたら、階下から母が私を呼ぶ声が聞こえてきた。
んあ? お客?
誰だろう?
私が実家に帰ってることを知っている人間なんて、そんなにはいない。
直也と、礼子さんと、
ハルカと、浩二と――。
「亜弓ーっ、伊藤さんて方がいらしてるわよー!」
『イトウサン』が『伊藤さん』に脳内変換された数秒後。
脳内が一気に漂白された。