白い吐息
恋心 〜Heart〜
大きな門の前に琴はひとりで立っていた。
手には住所が書かれたメモ用紙を持っている。
琴が呆然と見上げる豪邸、表札には【白居】という文字が堂々としている。
琴は唾を飲んだ。

戸部から話を聞いて、いてもたってもいられなくなった琴は、午後の授業が終わると同時に学校を飛び出したのだ。
しかし想像以上の豪邸を前に足がすくんでしまっている。

「ふぅ〜」

琴は深呼吸すると、右手の拳でこめかみをノックした。
気合いのポーズである。
そして震える人差し指でチャイムを押した。


「「はい…どちら様ですか?」」

数秒後、インターフォン越しに返事が戻ってきた。

「あっ…あの私、真人さんの高校で教師をしているものです…」

母親らしき声に琴は焦りを隠せずにいる。

「「真人…の?」」

「はい!その…真人さん、今日お休みだったのに連絡がなかったものですから心配になりまして」

「「…真人、休んだんですか?」」

その不安そうな返事に、琴はシマッタと思った。
真人が親に内緒で休んでいることに気が付いたからだ。

「あっ…あの…」

なんとか弁解しようと考える琴。

「「どうぞ、入って下さい」」

焦る琴と対照的に、声の主は冷静にそう言った。
そして大きな門が自動で開いた。
呆気にとられる琴。
門から遠く離れた玄関に細身の女性の姿があった。
琴は深々と頭を下げ、敷地内に入った。




琴が通されたのは応接室のような所だった。
小さな花柄の壁に額に入った油絵が飾ってある。
家の誰かが描いたものなのか、有名な画家が描いたものなのか、琴には全く分からなかった。
ただ革の座り心地のよいソファーに座らされ、周りのもの全てが高価なような気になって仕方なかった。
琴がキョロキョロしていると、さっきの女性が部屋に入ってきた。

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